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2012年11月 1日 (木)

八ッ場ダム――利根川水系河川整備計画をめぐって

いったんは「中止」が言明されたにもかかわらず民主党政権の迷走で「再開」が「宣言」された八ッ場ダム。しかし、建設には「条件」がつけられています。

 

それは「利根川水系河川整備計画」の策定です。河川整備計画というのは、その川の治水、水利用、環境などを総合的に検討して、流域住民の意見をしっかり取り入れて作ることが河川法で定められています。

 

ダムが必要かどうかもその中で判断されます。自民党らは、この河川整備計画をさっさとやらせようと、県議会に「意見書」を出してきました。

 

私は反対討論しました。

 

 

「利根川水系河川整備計画の早期策定と八ッ場ダム本体工事着工を求める意見書」

 

 意見書案は、利根川水系河川整備計画の早期策定を求めています。
 そもそもダムというのは河川整備計画の中で、その必要性が位置づけられなくてはなりません。八ッ場ダム建設の前提条件であることは明白です。そして河川法は、河川整備計画の策定にあたって流域住民の意向をしっかりと反映させることを求めています。

 

 利根川水系河川整備計画は2006年11月に策定作業がはじまりました。当時国交省は、公聴会や有識者会議、パブリックコメントなどを繰り返しおこなって原案を何度も修正する、という策定手順を示していました。ところが、理由不明のまま2008年5月から中断です。

 

 今回、河川整備計画の策定が八ッ場ダム建設再開の条件とされたことで策定作業がにわかにはじまり、利根川・江戸川有識者会議も再開しましたが、当初の策定手順とは異なった異様な展開となっています。

 

  21人もいる有識者の都合や膨大な資料を読み込む時間的猶予も考えて、通常なら2~3ヶ月に1回くらいのペースで開催されるはずが、9月25日に4年ぶりに再開されると10月4日、16日と連続開催の異様なペースです。そのため4日の会議などは出席が10名と半数を割る始末です。

 

 利根川水系は、わが国最大の集水面積を持ち、たくさんの支流があります。首都があり、人口が密集し、社会的な影響も大きい地域です。広く意見を聞き、慎重な計画策定が求められているのにあまりに拙速です。

 

 また、河川整備計画を本川と支流に分け、本川の整備計画だけで利根川整備計画を策定したことにしようとしています。しかし、官房長官裁定が求めているのは利根川水系の河川整備計画であり、本川だけの計画では条件をクリアしたことになりません。

 

 河川整備計画は、治水、利水、環境など河川に関するあらゆる問題を総合的に考えて策定するものです。ところが国交省は、八ッ場ダムを正当化するために膨らませた洪水の目標流量を有識者会議に示し、その数字だけを先に決めさせようとしてきました。今朝の新聞では国交省提出の資料の「捏造」疑惑が報じられています。

 

 目標流量を決めるにしても、それを達成するにはどのような河川施設が必要で、どの程度費用がかかり、環境への影響はどうなのか、いろいろ考えなければ是非は判断できません。なのに性急なことに16日の会議では、国交省の意を受けた座長が「議論が平行線だから」と目標流量議論の打ち切りまで言い出しています。

 

 このようないい加減で意図的な議論で利根川水系の河川整備計画がたてられてはたまりません。急がせるよりも慎重な策定を求めるべきです。

 

 意見書案は「平成27年度までのダム完成の遵守」もうたっています。実現不可能なことをなぜ求めるのでしょうか。前田前大臣は、今年2月の衆議院予算委員会で「本体工事に着工してから7年で完成」と答弁しています。

 

 本体工事は、現在行われている利根川水系河川整備計画の策定後であるから、仮に今年度中にに策定され、八ッ場ダムが位置づけられたとしても完成は平成32年度以降です。27年度ということは7年の工期を2年でやれと言うのです。手抜き工事でもやれと言っているようなものです。あまりに無責任であります。

 

 私は、ダム湖周辺のぜい弱な地質を繰り返し指摘してきましたが、地滑りでも起これば、さらに10年単位で完成は先延ばしとなるでしょう。

 

 水没地域周辺の遺跡発掘がすすむなかで、八ッ場には縄文時代から江戸時代まで、たくさんの遺跡が出土しました。とりわけ天明3年の浅間噴火にともなう、日本のポンペイともいえる貴重な遺跡が眠っていることがクローズアップされてきました。

 

 ダム湖観光にすがる生活再建はまったくの絵に描いた餅です。吾妻渓谷を生かし、温泉を生かし、そして史跡を生かした生活再建をすすめるべきです。そうした観点から、この意見書には賛成できません。

 

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