« 討論時間の制限 | メイン | 本腰入れて障害者雇用の前進を »

2012年12月27日 (木)

県職員給与・退職手当引き下げは、賃下げスパイラル、デフレ加速の道

公務員賃金・手当削減の嵐が吹き荒れています。国地方公務員にもその動きが及び、12月群馬県議会では県職員退職手当の大幅引き下げ条例が強行されました。

さらに自民党などは賃金の引き下げもねらい「引き下げを求める決議」まで多数で押し切りました。私は、公務員賃金の引き下げは、間違った政策だと考えます。

以下、12月議会でおこなった私の討論を読んでください。

 日本共産党の伊藤祐司です。議第四一号「県職員の給与引き下げを求める決議案」に反対の立場から討論いたします。

 師走も半ばとなり年賀状をしたためる時期となりました。「あけましておめでとう」という言葉には、今年は去年より良くなるように――そんな願いが込められていると思います。ところが、県職員は、退職手当を大幅に引き下げられた上に来年は賃下げだと。こんな決議をあげられたら、希望もしぼむというものです。

 この決議案は、誤謬に満ちています。
 そもそも、デフレの克服が経済立て直しの最重要課題となっている時に、議会として数万人の労働者の賃下げを求めること自体が間違いです。

 日本は、10年以上にわたって経済がマイナス成長となっている世界で唯一の国です。その最大の原因は労働者の賃金が下がりつづけていることです。一九九八年~二〇一〇年の12年間で二九兆円も減少しました。

これがそのまま消費の低迷に直結しています。一方でこの間、大企業の内部留保は117兆円も増大し260兆円と国家予算の3年分にも匹敵する額にふくれあがっています。

この内部留保が貯め込まれただけで社会に出てこない。死に金となっていることが、不況が一向に改善されない最大の理由です。

Koumuin0_3

 いま、政治に求められているのは、大企業の内部留保をいかに社会に還元させるのか、そこに知恵を絞ることではないでしょうか。世間がそうなのだからしかたがないなどというのは、政治の役割を放棄しているに等しいと私は思います。

求められているのは賃上げと雇用の改善

 日本共産党は、内部留保を賃上げや雇用の拡大、中小企業の下請け単価引き上げなどに還元することを提案します。ILOもこの間、日本の賃下げを批判し、賃金・最低賃金の引き上げで国民所得を増やして内需を拡大することなどを不況脱出へのアプローチとして示しています。世界から求められている課題なのです。

 ところが日本は、使い捨て自由の派遣労働はそのままに、電機業界の異常なリストラ競争をはじめ、雇用の切り捨てが相次いでいます。公務員にたいしても定数削減と並行して賃下げが続き、群馬県職員も10年前と比較して所属長クラスの賃金はマイナス151万円という状況です。

 そして今年は、労働基本権を制約されている国家公務員に対して、交渉当事者でもない議員立法による7.8%賃下げ、さらには退職手当引き下げが強行されました。異様な賃下げのオンパレードです。そして、ついに群馬にも県職員の退職手当の大幅な引き下げが持ち込まれたことは、冒頭で述べたとおりです。

 決議案は、さらに県職員の賃金を引き下げろと言っている。公務員の賃金削減は、民間の賃金削減の引き金となります。賃下げスパイラルを加速させます。国並みの賃金カットとなれば100億円のマイナス。そのまま消費の低迷につながります。不況脱出どころではありません。

 決議案は、県税収入や地方交付税にも言及していますが、その方向は、県税収入をさらに低下させるとともに、地方交付税の削減にも口実を与える道であります。
  このような決議は、果たすべき議会の役割と正反対のものであると言わねばなりません。

正されるべきは意図的なニセ情報

 決議案の典型的な誤謬が「本県職員の給与水準が、国家公務員の平均よりも高い」とのくだりです。

 今議会の一般質問で、岩井議員がラスパイレス指数、南波議員が平均給与額の表を示して質問されましたが、ラスパイレス指数は8.8%の実態しか反映しない、国家公務員の平均給与には高額な給与をもらっている指定職が含まれていないなど、比較の対象にならない数字であります。そのことは、質問者自身も質疑のなかで認めておられるとおりです。

 そのような地方公務員の給与を高く見せようという意図的な情報をもとにして「本県職員の給与水準が、国家公務員の平均よりも高い」という『指摘もある』というだけで賃下げを求めるなど、あまりに乱暴ではありませんか。

 決議案には「県民の理解を得るためにも、速やかに是正されるべき」といいますが、是正されるべきなのはこのような誤った情報であります。

 「公務員が多すぎる」「公務員の賃金は高くて優遇されている」といった「情報」が流されています。しかし、OECD加盟の比較可能な統計のある24カ国の公務員給与水準を比較すると、GDPに占める公務員給与の比率も労働力人口に占める公務員の数も、日本は最も低い。それも飛び抜けて低い国であります。こんな公務員バッシングこそ是正されるべきであります。

Koumuin1_2

 さらに決議案は、義務的経費の増加を問題視し、給与削減によって財源を確保するよう求めています。しかし、県行政サービスの中心部分を占める保健、福祉、医療、介護、教育、警察等々、その多くが義務的経費の支出によるものであり、義務的経費を県民サービスと対立させる描き方も問題です。

 いずれにしても、労働基本権を制約され、抗う手段を奪われている公務員に対して、代償機関である人事委員会の権限も飛び越えて、意図的な、為にする情報を元にして、議会が大幅な賃金削減を求めるなどは間違いであります。その道は、公務員のモチベーションも行政府の能力も低下させ、行政サービスを質・量ともに落とす自殺行為です。そのような道を求める決議案に断固反対し、まっとうな賃上げと雇用の確保こそ必要であることを主張して討論といたします。













トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.kazelog.jp/t/trackback/233047/30683695

県職員給与・退職手当引き下げは、賃下げスパイラル、デフレ加速の道を参照しているブログ:

コメント

コメントを投稿

Powered by Six Apart